『ヒトラーの贋札』を観る
第二次世界大戦中、敵国内の経済を混乱(破綻)させることを目的に、ナチス・ドイツが外国紙幣を贋造するという実際にあった話を基につくられた作品。
原作はアドルフ・ブルガー著、『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』。
その作戦はベルンハルト作戦と呼ばれ、国家による史上最大の紙幣贋造事件となったそうです。
紙幣の贋造はナチの強制収容所へと送られたユダヤ人技師が手がけることになり、この作品はベルンハルト作戦に加担したそのユダヤ人たちの葛藤や苦悩を描いたものでした。
最初はポンド札の贋造。
作品の主人公である天才的な贋造師サリー・ソロヴィッチ(カール・マルコヴィクス)のお陰で、英国の銀行が念書を出すほどの精巧な贋札を造ることに成功。
次はドル札に取り掛かる。
そこでソロヴィッチをはじめ、それぞれにナチの作戦に加担していることへの葛藤があらわになる。
妻をアウシュビッツで亡くした印刷技師・ブルガー(アウグスト・ディール)はドル札贋造の進行をわざと遅らせ、ナチに戦局有利になるような資金を与えまいと断固として正義に徹する。
なかなか完成しないドル札にしびれを切らしたナチに「完成させないと、ユダヤ人技師の中から5人ランダムに選んで殺す」と脅され、ソロヴィッチは悩み、頑なに自分の正義を貫くブルガーと衝突する。
自分の命か、正義を貫くか。
この辺の技師たちそれぞれの葛藤や苦悩の様子は、ひしひしと伝わるものがあり、自然と「自分だったら・・・」という気持ちになります。
こういう言い方をしていいのか、こういう表現しか今は出来ないのだけど、この葛藤と苦悩の様子がとても見ごたえがありました。
私は仲間を見殺しにできない気持ちになって、徹底的に正義を貫くブルガーに(少しばかり)嫌悪感を抱いてしまった。目先のことばかりに振り回されてしまう人間なのだと少し自分に嫌悪感・・・。^^;
ただのシャワー室なのに「ガス室だ!」と騒いで気絶するコーリャを見ても、私も狂い騒ぐだろうなと思ったし・・・
戦争映画を見て、「自分だったら・・・?」とこんなに置き換えて観た映画はこれが初めてかもしれない。
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原題:DIE FALSCHER/THE COUNTERFEITERS
監督・脚本:ステファン・ルツォヴィッキー
原作:アドルフ・ブルガー
出演:カール・マルコビクス アウグスト・ディール デービト・シュトリーゾフ
上映時間:96分
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コメント
私もよく戦争にちなんだ映画をよく観るようになりました・・・ナチスの残党の話とか・・・裁判とか。
観るたびに落ち込んだり、ショックを受けたりすることもありますが、現実から目を背けてはいけない。受け入れなくちゃ。私たちもそうだけど次世代にもきちっと伝えなくっちゃって観る度にいろいろ考えさせられてしまいます
↑の映画、探してみようかなぁ...
なかなか興味深いなと思いました。
ところで先日言ってた「エリザベス:ゴールデンエイジ」観てきました
衣装や映像は・・・凄かった(笑)
投稿: りざふぃ | 2008年2月22日 (金) 10:11
>りざふぃさん
おっと・・・反応が遅くなってスミマセン!<(_ _)>
私はりざふぃさんとは逆に、あまり戦争映画は選択しないようにしているんです。引きずりやすくて、心が復旧するのに1週間くらい費やしたりもするので。。
この作品もですね、まったく眼中になかったんですよ。観る2時間前までは『アース』を観るつもりでいたので、ほぼ飛び込み状態で観てしまいました。(衝動的だったなぁ・・・)
多分、『贋造事件』に興味が行っちゃったんでしょうね。この話は全く知らなかったので、興味深かったですよ。
ただ、都内でも1箇所でしか上映されていないので、関西方面でも上映されてる所は少ないかもですね。でも、観に行かれたら、感想を教えて下さいな。
投稿: aju | 2008年2月24日 (日) 21:52